
お酒造りで重要と言われる「麹菌」の働きとは?
お酒造りで大事な微生物である麹菌。
発酵食品を作る上で重要な役割を担うのですが、日本酒造りにおいてどのような働きをしているのかを知らない方もいらっしゃるかと思います。麹菌を使うことで日本酒にどのような効果があるのでしょうか?
今回は麹菌について大解剖!麹菌の種類や麹造りで重要なことについてもまとめていきます。
そもそも麹菌とは?
麹菌はカビの一種!…というと聞こえはあまりよくありませんが、実は有用生物として私たちの身の回りに存在しています。その実用性の高さから「東洋微生物の王様」と言われています。東洋のみに存在する微生物として知られ、日本人の身体にも適合していることから日本食文化に根付いてきました。
麹菌をお米や大豆などに生やして育てると、お馴染みの「麹」が出来上がります。麹菌そのものを食べることはあまりありませんが、発酵食品として代表される味噌、醤油をはじめ、焼酎や日本酒造りなど、その用途は多岐にわたります。
また麹菌と似たワードで「酵母菌」があります。麹菌と同じく発酵作用を持っていますが、糖を分解しアルコールを生成するため、麹菌とは全く異なる類の生物となります。
麹菌の種類
麹菌には3種類存在します。
黄麹
もともとは日本酒を造るために開発された麹菌であるため、日本酒のほとんどが黄麹で造られています。
黄麹では味噌、醤油やいくつかの焼酎にも使われています。デンプンを糖に分解するアミラーゼを多く生成するため、アルコール生産にも有利に働きます。黄麹を使った日本酒はフルーティーな味わいを持つようになります。
クエン酸などの酸をほとんど生み出さないため、雑菌に弱いという弱点があります。腐敗するリスクが伴うので低温での管理が必須となります。
黒麹
沖縄発祥の麹菌。触るとススのように手が真っ黒になります。沖縄特産の泡盛のほとんどには黒麹が使われています。
黄麹とは違いクエン酸を多く含むため、九州や沖縄などの暑い地域でもお酒造りを行うことができます。
黒麹で造られた焼酎からは重厚感のあるコクが感じられます。クエン酸由来の辛口となる傾向にありますが、このテイストが泡盛と焼酎の深い味わいを構成しています。
白麹
黒麹の突然変異種。生き物である限り菌にも突然変異が起こります。大正時代、九州にて焼酎造りを行っていた際に発見されたのが始まりと言われています。
パンチのある味わいは黒麹と共通する部分ですが、鋭いキレの中に感じられる微かなマイルドさは黒麹とはまた違う白麹ならではの特徴となっています。原料の風味を残すことができるので、本格焼酎ファン好みのテイストを表現することができます。
日本酒造りにおける麹菌の役割
日本酒造りにおける麹菌の役割は、お米に含まれているデンプンを糖に変えること。デンプンが糖に変換される時点ではアルコールは発生しません。麹菌が糖を生みだした後、酵母菌が糖を餌にして発酵することでアルコールが生成されます。
麹菌がなければ糖が生みだされることもなく、酵母がアルコール発酵をすることもないので、日本酒や焼酎を造ることができません。日本発祥のお酒にとって麹菌は必要不可欠な存在なのです。
繊細な麹の造り方
お米に麹菌を繁殖させたものを「米麹」といい、米麹を造る工程のことを「製麹(せいきく)」といいます。製麹をする際に職人たちが最も神経をとがらせるのが温度管理!
麹菌が活発に働いてくれる温度帯は30~40℃とだいたい決まっています。15℃以下になってしまうと麹菌は活動を停止してしまい、反対に50℃以上の高温になってしまうと死滅してしまうためデンプンは分解されなくなってしまいます。
麹菌が繁殖する際には熱を発生させるため自然と温度が上昇してしまいます。さらに繁殖には呼吸も必要となるので、空気の入れ替えを頻繁に行う必要があるのです。人間のように空調でどうにかなるような生き物ではないので、徐々に変化していく状態をいかにキープできるかが問われています。
まとめ
今回は麹菌についてお伝えしました。麹菌は有能なカビだったんですね。
東洋人の健康を保つのに重要な役割を果たしてくれている麹菌。お酒や発酵食品を選ぶ際は、使われている麹菌にも注目してみてはいかがでしょうか?