甘みが増す仕込み!?日本酒の段仕込みとは

皆さんは「〇〇段」と聞いて何を思い浮かべますか?剣道?柔道?囲碁?将棋?はたまた飛んだら自慢できる跳び箱の段数…?いろいろあると思います。

しかし、今回ご紹介したいのは日本酒造りにおける段仕込み!SAKEブームに火が付いたことで世界的人気を誇っている日本酒ですが、どんなに日本酒が好きであってもその仕込み方にまで目を向けることはあまりないのではないでしょうか。

どんなプロセスを経てどんな味わいの日本酒ができるのか、その特徴にも迫っていきます!

日本酒の段仕込みとは?

麹によってお米に含まれるでんぷんの糖化が行われると、酵母菌が糖分を餌にしてアルコールを生み出すようになります。麹も酵母菌も同時進行で働ける環境を持つ液体は「酒母」と呼ばれ、「酒母」が作られた後には段仕込みが待っています。

日本酒の仕込みは「初添」「踊り」「仲添」「留添」の4つのプロセスに分けられます。段仕込みとは蒸米と水、麹を入れる工程を指し「初添」「仲添」「留添」が段仕込みに当たります。

蒸米、水、麹を投入する作業自体はどの工程も同じに見えますが、どの段階でどれだけの量を加えるかによって目的がだいぶ変わってきます。

初添 日本酒段仕込みの1日目に行われる工程。初添用の小さなタンクに酒母を移し蒸米、麹、水を加えます。専用の棒でかき混ぜて発酵を促進させます。
踊り 段仕込みの2日目に行われる工程。水も米も麹も何も加えませんが、酵母菌を増殖させるために絶えずかき混ぜる必要があります。蒸米が水を吸収して膨らんでくるので、段としてカウントされなくてもけっこうな重労働となります。
仲添 段仕込みの3日目に行われる工程。蒸米、麹、水は初添の時の2倍量が加えられます。
留添 段仕込みの4日目に行われる工程。蒸米、麹、水は仲添の2倍量が加えられます。

以上の工程が段仕込みの基本となります。段仕込みが終了した後には温度調節しながら発酵が行われ、もろみをしぼって日本酒となるまでには3週間から1か月の時間を要します。

分けて仕込む理由

わざわざ段階的に分けなくても一気に仕込みができそうな気もしますが、そうもいきません。日本酒は微生物の力によって造られるため、環境が大きく変わることで微生物の働きが弱まってしまったり失活してしまうこともあります。

仕込まれた酒母は酸性となりますが、水、麹や原料米などは酸性ではありません。一気に大量投入してしまうと酒母の特性が薄くなってしまい、せっかくできた酸性の性質をキープできなくなってしまうのです。

段階的に少しずつ仕込んでいけば酸性を保つことができます。雑菌の繁殖を抑えながら安全なお酒造りができるようになるため、どの酒造でも段仕込みを採用しているのです。

段が上がれば甘さが増す?

仕込む回数が多くなればなるほど甘みが増すと言われています。これは酵母によるアルコール発酵が行われなくなるためです。

酵母は自分で生み出したアルコールによって死滅してしまうという特性を持っています。
酵母が死んでも高温でない限りは麹菌の生存は可能。となると麹菌によるでんぷんの糖化だけは行われ続け、結果甘くなるというわけです。

甘くなるとは言っても醸造アルコールのようなわざとらしい甘さではありません。本醸造や吟醸酒へ添加されるアルコールに嫌悪感を抱いている方は、四段仕込み以上の純米酒を選ばれてみては?

段仕込みの種類

仕込む回数で段が設けられている日本酒。使われる段仕込みにはかなりの種類がありました!!

三段仕込み

日本酒造りの中で最もスタンダードな仕込み方。多くの蔵元が三段仕込みでお酒を仕込んでいます。先ほどご紹介した「初添」「踊り」「仲添」「留添」の工程が4日かけて行われます。

三段仕込みの歴史は古く、江戸時代初頭にはすでに三段仕込みによる日本酒造りが行われていたという記録が残っています。

四段仕込み

ベーシックな三段仕込みが行われた後、もう一度蒸米を加えて仕込む手法です。加えられるお米の種類は「もち米」や「うるち米」などがあり、もち米による四段仕込みが行われたものは「もち四段」、うるち米による四段仕込みが行われたものは「うるち四段」となります。

四段仕込みで仕込まれたお酒は、すっきりしたテイストでありながらコクと甘みを合わせ持つ、味わい深い酒質となる傾向にあります。

五段仕込み

ベーシックな三段仕込み+蒸米+蒸米の計5段に分けて仕込む手法。濃醇甘口テイストとなる傾向にありますが、うま味や酸味、キレのバランスが整っているのも特徴です。

六段仕込み

五段仕込みよりも一回多く分けて仕込む手法。蒸米の投入を細かく刻むことでおだやかな発酵を促し、コクと香味成分が凝縮されていきます。

七段仕込み

基本の三段仕込みに、さらに蒸米を4回に分けて投入して仕込まれる手法。日本では辛口純米酒の七段仕込みが存在しています。

元が辛口なだけにこっくりとした甘さではなく、すっきりとしつつも五味のバランスが取れた酒質となっています。

八段仕込み

基本の三段仕込みに、さらに蒸米を5回に分けて投入して仕込まれる手法。八段仕込みで仕込まれた日本酒は国内にたったひとつしかありません。

さすがに八段までくると濃醇甘口を通り越して「甘露」という表現の方がしっくりくるかもしれません。それぐらい濃い甘みを持っています。

九段仕込み

基本の三段仕込みに、さらに蒸米を6回に分けて投入して仕込まれる手法…ともっともらしく言ってますが、実際に九段仕込みで安定的にお酒を造っている酒造は見当たりません。挑戦している所はあるみたいですが、やはり手間とコストがネックとなるのかもしれません。

十段仕込み

九段仕込みで造る酒造がいないので十段仕込みの存在も絶望的に思われたのですが、大手酒造メーカーが十段仕込みで日本酒造りを行なっていました!

実際にメーカーでは十段仕込みに50日かけています。三段仕込みの10倍以上もの時間が費やされていることになりますね!十段仕込みで醸された日本酒は濃厚な甘みを持ち、貴醸酒にも負け劣らないデザート酒として美味しくいただくことができます。

まとめ

今回は日本酒の段仕込みについてフォーカスしました。

数回に分けて仕込みを行うのは酸性をキープさせて腐敗を防ぐためだったんですね!科学の力を味方につけた仕込み方法でした。
同じ酒米、同じ水を使っても、何段で仕込んだかによっても味に違いが出てきます。造られる地域、原料を気にして飲んできた方は、何段仕込みかもぜひチェックしてみてくださいね。

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