日本酒の選び方が変わる!?「きょうかい酵母」を徹底解説

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日本酒を飲み慣れてくると、裏のラベルに書かれているスペックが気になりますよね。

酒米や日本酒度はなじみがある方も多いかと思いますが、酵母の欄によく書かれている「きょうかい酵母」ってご存知ですか?
実は、この酵母について知っておくと、日本酒が選びがまたワンランクアップするのです。

そこで今回は、きょうかい酵母について詳しくご紹介します。実際に飲み比べてみたい方に向けて、きょうかい酵母の中でも人気の「7号」「9号」を使った日本酒情報も併せてお届けします。

また、以下記事にて、初心者の方でも飲みやすい日本酒の選び方を紹介しています。
「甘口の日本酒について知りたい」という方はぜひ参考にしてください。

参考記事:【甘口】日本酒おすすめ銘柄を徹底比較

そもそも「酵母(こうぼ)」とは?

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酵母とは、糖を分解してアルコールと炭酸ガスを生む微生物のことです。植物の表面や空気中など、私たちの身近なところに生息しており、古くから、日本酒をはじめとした醸造酒の製造に使われてきました。

日本酒の場合は、まず蒸した米に含まれるでんぷんを麹菌で糖に変え、その糖を酵母に食べさせます。そうすることで、アルコール発酵が起こり、日本酒が生まれるのです。

日本酒を飲むときにふわっと広がるあの香りも、原料のお米の香りではなく酵母によるものです。酵母は、アルコール発酵の際に副産物を生み出しますが、これによって香りや風味が変わります。酵母の種類は様々あり、それぞれが異なった副産物を生み出すため、日本酒造りではどの酵母を使うかがお酒の出来に大きく関わってきます。
では、日本酒のラベルでよく見る「きょうかい酵母(協会酵母)」とはなんなのでしょうか?

多くの酒蔵で使われる「きょうかい酵母」とは?

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「きょうかい酵母(協会酵母)」とは、日本酒のために培養された酵母の中でも、日本醸造協会が頒布しているものをいいます。自分の蔵で培養をするケースもありますが、ほとんどの酒蔵が、このきょうかい酵母を購入して日本酒をつくっています。

きょうかい酵母の歴史

明治時代以前は、それぞれの蔵に棲みついた酵母を培養して酒造りが行われていました。しかし、自然のものはバクテリアに侵される危険性が高く、毎年お酒の質が大きく異なることが課題でした。

明治時代に入ると、自然発酵よりも安定して酒造りができるよう、酵母を選抜するようになります。当時は酒から徴収する税金が国を支えていたので、毎年安定的に酒税を確保したかったことが背景です。優良な酵母を探し出し、培養して全国の酒蔵に配ることで、質の高いお酒が安定して生み出せるようになっていきました。

そこから次々に優良な酵母の培養が進みます。明治37年に設立された国立醸造試験所が全国の蔵を周り、兵庫県・灘「櫻正宗」の蔵から発見された酵母が、のちの「きょうかい1号」となります。そこから新たに培養された酵母が2号、3号と数字をつけて頒布されるようになり、きょうかい酵母は全国に広がっていったのです。

きょうかい酵母の種類

現在、日本醸造協会が頒布しているきょうかい酵母は以下の通りです。

・きょうかい6号(601号)
・きょうかい7号(701号)
・きょうかい9号(901号)
・きょうかい10号(1001号)
・きょうかい11号(1101号)
・きょうかい14号(1401号)
・1501号
・1601号
・1701号
・1801号
・1901号

これらは清酒用の酵母ですが、他にも、焼酎用の2号・3号・4号、ワインに使われるブドウ酒用1号・3号・4号、濁り酒に使われる赤色酵母もあります。

6号~14号までが各2種類あるのは、「泡あり」と「泡なし」で区別されるからです。601号など、括弧内の酵母は泡なし酵母です。泡ありは泡の状態から発酵の経過が分かりやすいという利点がありますが、泡が出すぎて吹きこぼれてしまう場合があります。泡なしは突然変異で生まれた酵母で、かつては泡ありが主流でしたが、現在では泡なしが多く利用されています。

人気は「7号酵母」と「9号酵母」

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ここからは、きょうかい酵母の中でも特に人気が高い「7号酵母」と「9号酵母」について解説していきます。

一番人気の酵母、「7号酵母」

昭和21年に、長野県の「真澄」の蔵から抽出された酵母です。「真澄酵母」とも呼ばれます。昭和21年に行われた2つの品評会で、「真澄」がトップ3を独占したことから、きょうかい酵母として培養し頒布されることになりました。現在利用されているきょうかい酵母の60%を占めると言われています。

発酵力が強く、華やかな香りが特徴で、普通酒に利用されることが多いです。癖の少ないバランスのとれた味わいが人気のきょうかい酵母です。

日本酒をフルーティーにする、「9号酵母」

昭和28年に、熊本県の「香露」の蔵から抽出された酵母です。「香露酵母」とも呼ばれます。当時は蔵が自身で使用していましたが、交流のある他の蔵に提供したところ話題となり、全国から「頒布してほしい!」との声が上がったのだとか。

この出来事がきっかけできょうかい酵母として頒布されるようになりました。9号酵母誕生後は多くの蔵が好んで使用し、全国新種鑑評会では1990年代まで、9号酵母でつくられた日本酒が上位にランクイン。入賞の必須条件とも言われたそうです。

特徴は、香り高い吟醸香です。その香りから、吟醸酒用として多く利用されています。また、酸が少なく、低温の短期発酵型なのも特徴。フルーティーな香りが好まれているきょうかい酵母です。

▼「吟醸香」「フルーティー」の日本酒・成分を知りたい方はこちらの記事から

7号と9号だけじゃない!その他の酵母の特徴

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7号、9号の酵母の他にもおさえておきたい有名な酵母があるので、あわせて紹介していきます。

ナンバーシックス(No.6)、6号酵母

昭和10年に、秋田県の「新政」の蔵から抽出された酵母です。現在頒布されているものの中では最も古く、まろやかな香りと味で多くの酒蔵に好まれてきました。淡麗なお酒にぴったりの酵母です。
6号酵母を使った新政酒造のお酒は、新種鑑評会で2年連続トップに輝きました。現在の吟醸酒の作り方として広まっている、6号酵母と「雄町」を50%精米したものを掛け合わせ長期低温発酵する、という作り方も、新政酒造が確立したものです。

近年では、6号酵母の長所を引き出した「NO.6(ナンバーシックス)」シリーズが発売され、注目を集めています。ラベルの美しさも話題ですので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

品評会で続々入賞!1801号酵母

吟醸酒ブームにより、「もっと吟醸香を生む酵母が欲しい!」というニーズが高まってきました。それを叶えるために1601号酵母、1701号酵母が生み出され、さらに改良が施された酵母が1801号です。

2006年から頒布されており、近年の新種鑑評会では1801号酵母使用の日本酒が続々と受賞しています。イソアミル系の青りんごのような香りが特徴的で、華やかできれいな風味のお酒ができます。

最新!1901号酵母

2014年に協会が開発した、最新のきょうかい酵母です。発酵食品の中には、天然の成分として「カルバミン酸エチル」という物質が含まれていますが、最近の研究では発がん性のある物質であることがわかってきました。

その「カルバミン酸エチル」を減らし、より良質な酒をつくるために生み出されたのが1901号酵母です。

代表的な7号酵母と9号酵母を使ったお酒10選

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きょうかい酵母について学んでいると、実際に味わってみたくなりますよね。代表的な7号酵母と9号酵母を使ったお酒をみていきましょう。

7号酵母を使ったおすすめ日本酒5選

7号酵母は、華やかな香りとバランスの良い味わいが特徴と紹介しました。

万人ウケするので、日本酒スターターやプレゼントを考えている人にもおすすめ出来るでしょう。それでは、7号酵母を使用したおすすめ日本酒を5つ紹介していきます。

山本 純米吟醸 生原酒

秋田の山本酒造店から、毎年1月に限定出荷される人気の日本酒。白神山地の麓で育った米と湧き水を使って作られています。

7号酵母特有の華やかな香りと、柔らかく細やかな旨味が特徴的。バランスのとれたきれいな日本酒です。6号酵母バージョンも同時期に発売されますので、ぜひ飲み比べてみてください。

真澄 山廃純米大吟醸 七號

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7号酵母発祥の蔵である宮坂醸造の「真澄」。信州産美山錦を使い、山廃造りで醸しています。しっかりと酸を感じる味わいで、穏やかな香りが特徴です。

フランスで行われた日本酒コンクール「KURA MASTER2018」で金賞を受賞するなど、海外でも人気のお酒です。癖の強いチーズなど、濃いおつまみと一緒にどうぞ。

阿櫻 特別純米無濾過原酒

秋田の阿櫻酒造が作る、特別純米酒です。秋田の酒米「秋田酒こまち」を使用しており、やさしい口当たりで、可憐な香りがふわりと感じられます。

2019年には、燗酒コンテストで金賞を受賞。燗、常温、冷酒それぞれに異なる風味を楽しめます。お燗をするなら、45℃がおすすめです。

新藤酒造店 超裏雅山流 緑風 特別純米酒 無濾過生詰

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山形の新藤酒造店が作る、超裏雅山シリーズの本格辛口です。シリーズのコンセプトである「クリーンでフレッシュ、遊び心を持って自由な発想で」を守りつつも、次世代の味の追究を試みたお酒なのだとか。

派手すぎない香りと、若々しくシャープな旨味、キレのある後味が特徴です。

杉勇 白麹仕込み純米酒

山形の地元で愛されている杉勇蕨岡酒造場の杉勇の中で初めて白麹を使用した純米酒です。

クエン酸を仕込みの際に使用しており、酸味と甘味がバランスよく、爽快な味わいとなっています。12℃前後に冷やして飲むのがおすすめといわれています。

9号酵母を使ったおすすめ日本酒5選

続いては、9号酵母を使った日本酒の紹介です。フルーティーな香りで甘口な場合が多いため、辛口な日本酒はあま得意ではないという方にもおすすめできるでしょう。

るみ子の酒 特別純米酒 9号酵母

三重県の森喜酒造場で作られている「るみ子の酒」。名前は、女性杜氏の森喜るみ子氏からとっています。

可愛らしいラベルは、漫画「夏子の酒」で有名な尾瀬あきら氏が描いたものです。やわらかく美しいタッチのラベルですが、お味はシャープで旨味もしっかりしており、9号酵母ならではの味わいです。燗が特におすすめ。こだわりの純米酒をお楽しみください。

日置桜 伝承強力 純米吟醸

日本酒 日置桜 純米吟醸 伝承強力 720ml 山根酒造場/鳥取県

鳥取の山根酒造場からは、強力米を使ったお酒を紹介します。強力米は、鳥取にしかない幻の酒米です。どっしりした酸をベースに、ぎゅっと凝縮された旨味を感じることができます。完全発酵でしっかりと甘みを切るのがこだわりです。「うまい酒はうまい米から」という考えのもと、農家と一緒にじっくりと作られるお酒で、その旨味をぜひ感じてください。

天狗舞 山廃仕込純米酒

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天狗舞
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山廃造りの先駆け、石川県の車多酒造が作る「天狗舞」。美しい山吹色は、じっくり熟成された日本酒本来の色です。

米本来の旨味を消さないために、色を調整する活性炭を使用せずに作っています。山廃仕込みの純米酒は、しっかりとした香りと酸味が、絶妙なバランスで調和しています。味わい豊かな、キレのいい味をぜひご堪能ください。

咲耶美(さくやび) 純米吟醸 直汲み生原酒 9号酵母

群馬の貴娘酒造で作られる、「咲耶美」。関東信越国税局主催の酒類鑑評会で、2019年に最優秀賞を獲得したお酒です。

甘みがあり、酸がしっかりとしていてキリッとした味わいがア楽しめます。洗練された後味は、スッと綺麗にフェードアウトするため、食中酒としても最適で、何度でも口に運びたくなります。

香露 特別純米酒

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9号酵母発祥地である熊本県、熊本県酒造研究所がつくる特別純米酒。

しっかりと引き出されたお米の甘みと旨味に、酵母由来の酸味とキレが綺麗な印象です。

40℃ほどのぬる燗で飲むと、濃厚で蒲焼き系の料理と抜群の相性を見せてくれるでしょう。

まとめ

きょうかい酵母の解説と、7号・9号酵母を使ったおすすめの日本酒情報を紹介しました。いかがでしたか?外出自粛で、おうちでの晩酌が増えてきた今日この頃。ぜひ今晩の日本酒選びに役立ててくださいね。

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