世界のお酒造りを支える職人「クーパー」って何をしてるの?

※当メディアの記事で紹介している一部商品にはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトなどのアフィリエイトプログラムが含まれています。 アフィリエイト経由での購入の一部は当メディアの運営等に充てられます。

ウイスキーやブランデー、ワインの味わいを決めるのに欠かせないアイテムといえば「樽」。

専らウイスキーやブランデーを生み出すのは蒸留所、ワインを生産するのは醸造所のお仕事ですが、お酒用に使われる木樽は樽専門の職人によって作られます。

今回は洋樽職人・クーパーにフォーカス!気になるクーパーのお仕事内容をご紹介するとともに、洋酒に樽が必要な理由も合わせてまとめていきます。

クーパーとは?

クーパーとは洋樽を作る職人のことを指します。蒸留所・醸造所が樽専門業者に外注して樽を卸すのが通例ですが、ニッカウヰスキーなどの大手メーカーでは自社で樽を製造するところもあります。

日本国内には2021年現在で約50人ほどのクーパーがいますが、高齢化によって継承が困難となり、樽産業は衰退の一途を辿っています。

そもそもお酒に樽が必要な理由

CREATOR: gd-jpeg v1.0 (using IJG JPEG v62), quality = 100

洋酒や焼酎に関わらず、近年は日本酒やビールも樽熟成が行われるようになりました。

ほとんどのお酒が樽を必要とするのは「熟成」のプロセス。樽を使うべき理由は大きく2つあります。

法律

生産国やお酒のジャンルにもよりますが、熟成最低年数が法律で決められています。

ウイスキーの場合、日本の法律において樽熟成はマストではありませんが、スコットランド、アイルランド、カナダといったウイスキー主要地域では、オーク樽で3年以上熟成させなければならないという規定があります。

またアメリカのバーボンウイスキーは、「内側を焦がした新品の樽」を使うことが義務付けられています。指定の樽を使わなければバーボンを名乗ることができません。

木樽とお酒の相互作用

木樽で熟成することで、お酒の性質が格段に変化します。

木材、熟成年数、お酒の種類、置かれている環境などによって変化の度合いが異なりますが、樽熟成する全てのお酒に共通して言えるのは、樽の成分が原酒に色や甘さ、渋み、奥深さ、繊細さを与えるという点です。

また木樽には、ステンレスタンクやコンクリートタンクほどの気密性がありません。原酒に空気が触れ酸化することで不快な風味が取り除かれ、複雑な風味を持つお酒に仕上がります。

造り手が理想とする味わいに近づけるためにも、樽での熟成が必要となるのです。

クーパーのお仕事内容

クーパーが担う仕事は樽の製造がメインですが、調子が良くない樽の修理や使い古した樽の解体作業も行います。

製造

樽を一から作ります。熟成樽として出荷されるまでに、組み立て、焼き、テストの3つの工程があります。

組み立て

切り取られた木片を選別し、組み立てていきます。樽鏡(たるかがみ)と呼ばれる外蓋と、樽本体は別々に作られます。

・樽鏡
数枚の板を繋げて円盤形にカットしたら、焼きの工程に移ります。

・本体
鉄枠の中に円を描くように板を立てたら、バラバラにならないように固定します。側面に蒸気を当て、板を柔らかくして成形しやすくします。
ハンマーを使い、鉄輪をしっかりはめ込んだら、焼きの工程に移ります。

焼き

焼きの工程では樽の内側を焦がします。用途によって「チャーリング」「トースティング」と呼ばれ、焦がし具合によって名称も異なります。

焼く基準や名称は樽メーカーによってさまざまです。今回は日本で熟成樽を製造している業者さんを例に、焼きの種類をご紹介します。

・チャーリング
ウイスキーや焼酎用の樽を焼くことを「チャーリング」と言います。焼き加減で「ライト」「ミディアム」「ヘビー(or ハイ)」の3種類に分けられます。

焼き加減特徴
ライトチャー軽めの焼き具合。色づきが遅く長期熟成に向きます。お酒本来の風味を生かしつつ、香ばしさとキレのある味わいをもたらします。
ミディアムチャー最もポピュラーな焼き加減。中長期の熟成に向き、多くのウイスキーや焼酎の熟成に用いられています。
ヘビーチャー黒焦げレベル。ワニの表皮のようになるまで焼かれることから「アリゲーターチャー」とも呼ばれます。樽の成分が早く溶け出すので、バーボンなど短期熟成のお酒に向きます。

・トースティング
主にワイン用の樽に使われる用語。焼くプロセス自体はチャーリングと変わりませんが、トースティングの焼き加減は7種類あり、チャーリングよりも細分化されています。

焼き加減特徴
ライトアロマへの影響はあまりなく、ワインのタンニン独特のクセを和らげます。
ミディアムオープンミディアムトーストよりも弱めの焼き加減。ワインをフレッシュなテイストに仕上げます。
ミディアムほとんどすべてのワインに適した焼き加減。バランスの良い自然なワインに仕上がります。
ミディアムプラス高い芳香をワインに与えたい時に適した焼き加減。特徴的なアロマを持つワインに仕上がります。
ミディアムロング オープンミディアムロングと同じ焼き加減ですが、よりフレッシュさのあるワインに仕上がります。
ミディアムロング主に赤ワイン向き。豊潤さと力強さのあるワインに仕上がります。
ミディアムロング トラディションフタをしてトーストする手法。白ワインの発酵樽に向き、重量感とフレッシュさを与えます。
焼きの後、組み立てのときにはめた鉄輪を外し、今度は鉄帯を機械ではめ込んでいきます。



テスト

樽の側面に穴をあけ、栓をしたら気密性の検査が行われます。空気圧をかけながら水を入れて、漏れがなければ検査通過です。

合格した樽は受注先に出荷され、晴れて熟成樽としてデビューします。

修理

液漏れしてしまう樽の修理を行います。板を取り換えるなどで、再度使えるように修理します。

解体

役目を終えた樽を解体する作業です。鉄輪を外し解体された後は破棄されることがほとんどですが、家具やコースター、ペン、オブジェなどの材料として再利用されることもあります。

まとめ

今回は樽職人「クーパー」をご紹介しました。

・樽にはワイン向きとスピリッツ向きがある
・焼き加減の基準は、製造メーカーごとに異なる
・製造のみならずメンテナンスや廃棄に至るまで、一連の作業を習得する必要がある

ということがお分かりいただけたかと思います。

今後、需要が高まる可能性がある産業なので、興味がある方はクーパーの知識を深めてみてはいかがでしょうか?

■この記事を読んだ方におすすめの記事
ワインの樽熟成と瓶熟成に違いはあるの?ワインの熟成方法についても紹介!
ワインの樽熟成と瓶熟成に違いはあるの?ワインの熟成方法についても紹介!
【2022年】お酒を飲むのが楽しくなるおすすめアプリ13選