ウイスキー界で話題の原酒交換とは?基本や歴史を徹底解剖!

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ウイスキーの蒸溜所では、個性を生かした原酒を開発しています。日本でも各地でウイスキーの生産が盛んになり、ジャパニーズウイスキーは世界から高い評価を得ています。

そして今、蒸溜所がモルト原酒を交換する「原酒交換」が注目を集めています。

ウイスキー生産が盛んなスコットランドでは当たり前の文化ですが、日本では原酒交換が始まったばかり。個性の違うモルト原酒をブレンドし、新たなブランドとして生産しています。

そこで今回は、ウイスキーの原酒交換の基本や歴史をまとめて解説します。

また、以下記事にて、初心者の方でも飲みやすいウイスキーの選び方をご紹介しています。
ウイスキーが好きな人は、本記事とあわせてぜひ参考にしてください。

参考記事:【おすすめ】自分に合った飲みやすいウイスキーの選び方

ジャパニーズウイスキーの歴史と定義

まずは、ジャパニーズウイスキーの定義と歴史から改めて紹介します。

1924年、山崎蒸溜所が建設されジャパニーズウイスキーの生産が始まりました。

サントリーの創業者、鳥井信治郎氏がスコットランドで修行してきた竹鶴政孝氏とタッグを組み、ウイスキーの生産を開始。ジャパニーズウイスキーは、スコッチウイスキーを再現しながら、独自の進化を遂げていきます。

国産の大麦とイギリスから輸入したピートを使用し、1929年に日本初の国産ウイスキー「白札」を発売。その後は、1937年に「角瓶」、1940年に「サントリーウイスキー黒丸」を発売し、日本国民の支持を集めます。

しかし、日本のウイスキーの定義は緩く、品質の悪いウイスキーが出回り始めます。世界各国から「ウイスキーではない」「水道水でもウイスキーとして売れる」と酷評が相次ぎました。

とはいえ、山崎のシングルモルトはスコッチのシングルモルトより高い評価を得ており、信頼されていた部分もあります。

そこで日本洋酒酒造組合は、ジャパニーズウイスキーの表示に関する定義を以下のように制定しました。

項目内容
原材料原材料は、麦芽、穀物、日本国内で採水された水に限ること。なお麦芽は必ず使用しなければならない
製法製造糖化、発酵、蒸留は日本国内の蒸溜所で行うこと。なお、蒸留の際の留出時のアルコール分は95度未満とする。
貯蔵内容量700L以下の木製樽に詰め、当該詰めた日の翌日から起算して3年以上日本国内において貯蔵すること。
瓶詰め日本国内において容器詰めし、充填時のアルコール分は40度以上であること。
その他色調の微調整のためのカラメルの使用を認める。
この定義により、ジャパニーズウイスキーの品質は向上し、世界から認められる存在となりました。

2020年現在では、日本に30以上の蒸溜所が凌ぎを削っています。最近は、クラフトウイスキーなどベンチャー系の蒸溜所も誕生し、業界も盛り上がり始めています。

海外からの評価も上がり続け、日本国内の原酒は不足気味といわれるほどになりました。

ウイスキーの原酒について

ウイスキーの原酒には、モルトウイスキー原酒とグレーンウイスキー原酒の2種類があります。

モルト原酒は、麦芽(モルト)をポットスチル(単式蒸溜器)で2回蒸溜し、木樽で熟成させたウイスキーです。風味や味わいが強いため、蒸溜所ごとに個性が出る原酒といわれています。

グレーン原酒は、麦芽やトウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀類を、連続式蒸溜機で蒸溜し、木樽で熟成したウイスキーです。軽やかな風味とすっきりとした飲み口の原酒といわれています。

原酒交換では、個性のあるモルト原酒同士をバッティングさせ、新たな個性のウイスキーを生み出します。

スコットランドでは一般的なものですが、日本では歴史が浅く、これから発展が期待されています。

ウイスキーの原酒交換とは?

ウイスキーの原酒交換とは、異なる蒸溜所のモルト原酒とバッティングさせ、新たなモルトウイスキーを生産することです。

原酒交換の背景には、日本洋酒酒造組合により「ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」の制定にあります。

日本はスコットランドに比べて蒸溜所が少なく、規模も小さめです。そのため、ウイスキーのバリエーションの幅が狭く、ジャパニーズウイスキー業界の成長は遅れていました。

唯一、原酒交換をして業績を伸ばしていたのはサントリーです。サントリーは、山崎蒸溜所、白州蒸溜所、知多蒸溜所を所有しており、それぞれの原酒を交換しながら商品開発を行っています。

しかし、それ以外の蒸溜所は規模が小さく、サントリーのように商品開発はできません。

そこで業界を発展させるために、「ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」を遵守しつつ、原酒交換の文化が発展してきたのです。

もともと日本では、スコッチのモルト原酒をブレンドしてきた歴史があり、ジャパニーズウイスキーの蒸溜所は、ブレンドの技術が高いとされています。

これにより多種多様なウイスキーが生まれ、ジャパニーズウイスキー業界も盛り上がってきました。

今までにないウイスキーが生み出され、ウイスキー愛好家からの期待も高まっています。

原酒交換によって生まれたウイスキー

それでは、原酒交換によって生まれたジャパニーズウイスキーを紹介します。

イチローズモルト×マルスウイスキー

イチローズモルトで有名な秩父蒸溜所と、マルスウイスキーで有名なマルス信州蒸溜所は、2015年4月より、モルト原酒の交換を開始しています。

スコットランドでは原酒交換が当たり前で、技術交換も盛んに行われています。
秩父蒸溜所とマルス信州蒸溜所でも、ブレンダーや造り手の技術を高め合うことも目的とし、品質や技術の向上に努めています。

原酒交換では、6年近くにわたり熟成過程をチェックし、共同開発を行ってきました。

そして、お互いの蒸溜所で熟成させた原酒を自社のモルト原酒とブレンドし、ブレンデッドモルトウイスキーを開発。

2021年には共同企画で誕生した「マルスウイスキー モルト デュオ駒ヶ岳×秩父2021」と「イチローズモルト ダブルディスティラリーズ 秩父×駒ヶ岳2021」を発売しました。

2つの環境で熟成させた原酒を、それぞれの地でブレンドすることで、一味違った個性が楽しめます。

限定販売ではありますが、これから新たなウイスキーが開発されるのでは、と期待が集まっています。

三郎丸蒸留所×長濱蒸溜所


FAR EAST OF PEAT SECOND BATCH 700ml (Rakuten)

若鶴酒造株式会社の三郎丸蒸留所と、長浜浪漫ビール株式会社の長濱蒸溜所でも原酒交換が行われています。

どちらもクラフトウイスキーを生産する蒸溜所で、クラフトウイスキーの原酒交換は日本初の試みとなっています。

原酒交換では、双方のブレンダーがそれぞれの蒸溜所を訪問し、原酒を選ぶところから始まりました。

そして2021年3月「FAR EAST OF PEAT」を発売。2017年に蒸留した三郎丸蒸留所のヘビリーピーテッドモルトと長濱蒸溜所のアイラクオーターカスク熟成させたライトリーピーテッドモルトを三郎丸蒸留所ブレンダー稲垣貴彦がセレクトしブレンドし、個性あふれるウイスキーに仕上がっています。

また2022年2月には、三郎丸蒸留所×江井ヶ嶋酒造の原酒交換第二弾となる商品「FAR EAST OF PEAT FOURTH BATCH」も新登場。こちらは600本の抽選限定販売にはなりますが、気になる方はチェックしてみてください。

関連記事:北陸唯一のウイスキー蒸留所「三郎丸」とは?特徴や歴史、商品の種類を紹介

まとめ

今回は、ウイスキーの原酒交換の基本や歴史をまとめて解説してきました。

原酒交換により、ジャパニーズウイスキー業界も盛り上がりを見せています。今後は日本でも原酒交換が当たり前になり、個性あふれるウイスキーが誕生しそうですね。

それでは本記事を参考に、ジャパニーズウイスキーを楽しんでみてくださいね。

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