「長濱蒸留所」とは?見学の様子や商品ラインアップなど、日本最小のウイスキー蒸溜所を紹介
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日本一大きな湖の近くにある日本一小さな蒸溜所、長濱蒸溜所。
長濱蒸溜所が造るウイスキーは、多くの章を受賞し、世界的に評価されています。
しかも2016年の設立からほんの数年、さらには、たった8坪の蒸留面積で、です。
一体どんな蒸溜所なのでしょうか?
今回は、長濱蒸溜所に行き、、ブレンダーである屋久さんにお話をお伺いすることができましたので、その様子などを紹介していきます。
また、以下記事にて、日本のウイスキーに興味がある人に日本各地のウイスキー蒸溜所をご紹介しています。
日本のウイスキーについて知りたい人は、本記事とあわせてぜひ参考にしてください。
参考記事:【日本国内】ウイスキー蒸溜所まとめ!
目次
長濱蒸溜所とは?
長濱蒸溜所は、滋賀県長浜市にあるブルワリー兼蒸溜所です。JR長浜駅から徒歩5分ほどの街中にあります。
もともと長濱蒸溜所は、1996年から長濱浪漫ビールの醸造所として使われてきましたが、2016年の11月に醸造蔵を拡張させる形でウイスキー蒸溜所が設立されました。
現在は、ビールの醸造、ウイスキーの蒸留、レストラン、各種お酒などの販売が1カ所で行われています。古いお米の蔵を改築して使用していて、梁などが活かされた構造です。
また、長濱蒸溜所の最大の特徴は、蒸留面積が約8坪(約26平方メートル)という狭小であることでしょう。
一人暮らし向けの賃貸で、1Kから1DKがおおよそ同じくらいのサイズですね。日本最小クラスの敷地面積です。
蒸留は、「一醸一樽」をモットーに100年後も愛されるようなウイスキー造りを行っておられます。
そんな長濱蒸溜所で造られるウイスキーは設立から間もないですが、国内のみならず世界的にも人気が高いです。
長濱蒸溜所を覗いてみよう
ご縁があり、長濱蒸留所へ伺い、ブレンダーの屋久さんに蒸溜所の設備をご案内いただく機会に恵まれました。
見学の様子と、いくつか質問させていただきました内容を紹介していきます。
見学の様子
見学の様子はこちらからご覧いただけます!
ブレンダーの屋久さんに聞いてみた
ま:本日はよろしくお願いいたします!
屋:よろしくお願いいたします!
ま:早速ですが、8坪というコンパクトな面積の中での作業について、良い点と苦労していることを教えていただけますか?
屋:良い点は、フットワーク軽く作業出来ることですね。ただ、人もすれ違うのも大変なくらい狭い分、スチルとの距離が近くなり夏場などは暑くて苦労します。
ま:たしかにコンパクトな分、作業効率は上がりそうですね。
作業でみると、8坪の中に3基のポットスチルがありますが、1日の生産量はどのぐらいなのですか?
屋:長濱蒸溜所では1日に約1樽分、200ℓのウイスキーをほぼ毎日精製しています。モットーである「一醸一樽」ですね。また、一日につくれる生産量自体はどうしても限りがあるので、年間で生産出来る量もおおよそ決まってきています。
ま:連日の稼働はかなり大変ですね。アルコールを精製する量を増やすために工夫されたり、増設を検討したりはしないのですか?
屋:増設は現在検討していないですね。しかし、限られた設備の中で精製量を増やす取り組みはしています。例えば「三番麦汁」の使用です。三番麦汁を翌日の仕込みに使用することで、その日の麦汁の糖度が上がるので、よりたくさんのアルコールを精製することができています。
ま:長期の保存は難しいと思いますので、回転率の高い生産をしている長濱蒸溜所ならではですね。
生産に関してもう1つ質問です。長濱蒸溜所ではビールの醸造も両立して行われていますが、注意していることや活かせていることなどはありますか?
屋:清掃はかなり注意して行っています。例えば、ピーテッドモルトを仕込んだ後のビールの仕込みは、スモーキーな香りがビールに移ってしまう可能性が非常に高いため徹底した洗浄が必要です。また、発酵タンクもビール用、ウイスキー用ですみ分けて行っています。
逆に活かせているというと、ビアカスクフィニッシュのリリースや、ビール用の酵母を使用した長濱浪漫ビール、長濱蒸溜所ならではのニューポットが出来るというところでしょうか。いろいろと相互に組み合わせてお客様に喜んでいただけるように日々アップデートを試みています。
ま:きっちりと分けながらも、工夫して活かしあっておられるのですね。
こういった、ビアカスクフィニッシュであったり、おもしろい・楽しい商品やサービスも長濱蒸留所の特徴の1つだと思っています。例えば、SAKE Maniaでも取り上げさせていただきましたが、振りかけて使用するアトマイザータイプの商品なども魅力的です。
▼AMAHAGAN ATOMIZERの記事はこちら
屋:そうですね。社長の伊藤がウイスキーファンを非常に大切にしており、多くの方に喜んで頂けるような発案が非常に多いです。他にも社内で新商品開発ミーティングなど案を常に出し合っています。
ま:そうなんですね。サービス面でも、ブレンドラボや蒸留体験が人気ですよね。どういったところが魅力なのでしょうか?
屋:国内初となる蒸溜体験ツアーは『見学』でなく、『体験』に重きを置いています。参加頂いているお客様とスタッフとの距離感も長濱蒸溜所は非常に近く、様々な工程を一緒に行うことが魅力だと思っています。
ブレンド体験も同じく、一滴単位で変わるブレンドの魅力や面白さを体験していただき、参加者様それぞれのオリジナルボトルが出来るように開催しています。
ま:「体験」することに重きをおいておられるのですね。私自身も、実際に蒸溜所へ足を運んで感じることがたくさんありました。
屋:特にこの長濱蒸溜所は、仕込みの工程がお客様から近いと思います。樽詰めをしながら「いらっしゃいませ」ということも日常茶飯事です(笑)。
ま:珍しいというか、長濱蒸溜所らしいですね(笑)。
長濵蒸溜所らしいと言えば、「AMAHAGAN」が代表的なシリーズになるかなと思います。「AMAHAGAN」について少しご説明いただけますか?
屋:もちろんです。AMAHAGNシリーズは現在5種類が定番となっています。どれを飲んでも非常に柔らかく飲みやすいブレンデッドウイスキーです。いろんな方に楽しんで欲しいので、ライトで飲みやすく、個性が分かりやすい味わいを目指して造っています。
ま:ありがとうございます。ウイスキーのおもしさが詰まった商品なのですね。リリースしてすぐに人気も火がついたイメージなのですが、どのようなスタートだったのでしょうか?
屋:実は最初のころは「なんとか造ってみる」というところからのスタートでした。しかし高い評価を受けるにつれて、より力を入れて本格的にシリーズ化へと動き出して行き、5種類の定番シリーズとなっていきました。
ま:そうだったのですね。現在は、AMAHAGANは限定品やコラボ商品もすごく多くリリースされていますね。
屋:テストバッチという形でもリリースしていますし、コラボもかなりの種類がありますね。これらの商品も、ラベルだけなく、コラボに合わせて、そのイメージに合うようにブレンドを変えています。
ま:1つ1つ工夫なされているのですね。ちなみに、思い出に残っているようなコラボ商品はあったりしますか?
屋:YAZŪKA(ヤズーカ)は思い出深いですね。YAZŪKA(ヤズーカ)は日本を代表するロックミュージシャンである吉井和哉さんの「人生を投影したウイスキー」を命題にブレンドをしたウイスキーです。
2種類のウイスキーをリリースするにあたり、吉井さんに3種類ずつ、計6種類を試飲いただきました。1つ目の提案を終え、もう1つのウイスキーを決めるときに、吉井さんから「コレだと思うものを一斉に指そう」と提案いただきました。本当に緊張しましたね。ただ、なんとか揃いまして、無事にリリースするに至ったんです。
ブレンド自体もかなり自信がありますので、いろんな方に試して欲しいウイスキーです。
ま:そんな大勝負のエピソードがあったのですね(笑)。驚きです。
最後に、「100年後に喜ばれるウイスキー」が蒸溜所のコンセプトの1つにありますが、約6年稼働した今、どのような像を描いておられるかお伺いしたいです。
屋:「地元との共存」と「体験」が100年後に繋がると思っています。長浜市の廃校になった小学校や廃トンネルをウイスキーの貯蔵庫として活用するなど、地域と共存していく姿勢と、体験による興味関心の拡大を大事にしていければと思います。
ま:なるほど、「根付く」ことが重要なのですね。私も応援しております。本日は、お忙しいところありがとうございました!
屋:ありがとうございました!
長濱蒸溜所で造られるウイスキーとビール
長濱蒸留所で造られるウイスキーとビールについて紹介していきます。
AMAHAGAN(アマハガン)
AMAHAGANは、ウイスキー造りの中枢となる「ブレンド」に焦点を当てたウイスキーです。現在5種類が定番品として販売されています。
ちなみに、一部輸入の原酒を使用しているため、敢えて英字表記でにされていたり、逆から読むと「NAGAHAMA(ナガハマ)」となったり、かなりこだわりの詰まった名前です。
AMAHGAN Edition NO.1
AMAHAGANシリーズの1作目となるエディションNO.1は、フルーティーな香りで、いわゆる煙くさい香りが少なく、味わいもほどよく麦を感じられるバランスの良いウイスキーです。
AMAHAGANの基礎となる型のようなテイストなので、ウイスキーを飲み始めるという方にもおすすめできる1本といえます。
原料:モルト
度数:47%
容量:700ml
価格:5,000円前後
受賞歴:ワールド・ウイスキー・アワード2020 ブロンズ
飲み方:ハイボール、ストレート
AMAHGAN Edition NO.2 Red Wine Wood Finish
エディションNo.2は、エディションNO.1 をベースに、赤ワインの個性を後熟によって与えたラインアップです。
赤黒いフルーツ感がしっかりと現れていて、樽熟成のおもしろさを体感することが出来る仕上がりとなっています。
屋久さん曰くAMAHAGANはワイン系のウッドと相性が良いらしく、ぜひ試して欲しい1本です。
原料:モルト
度数:47%
容量:700ml
価格:6,000円前後
受賞歴:ワールド・ウイスキー・アワード2020 ゴールド
飲み方:ストレート、トワイスアップ
AMAHGAN Edition NO.3 Mizunara Wood Finish
エディションNo.3は、エディションNO.1 をベースに、ミズナラ樽の後熟によって日本のウイスキーらしい個性を与えたラインアップです。
寺社仏閣っぽいいわゆるミズナラの風味がしっかりと感じられ、キャラメルのような甘さからビターなテイストへ抜けています。
ストレートで飲むのも美味しいですが、おすすめの飲み方はハイボールです。
ハイボールで飲むとアルコールの刺激が和らぎ、ミズナラの風味をより楽しめます。
原料:モルト
度数:47%
容量:700ml
価格:7,500円前後
受賞歴:ワールド・ウイスキー・アワード2020 カテゴリウィナー
飲み方:ストレート、ハイボール
AMAHGAN Edition YAMAZAKURA
エディション山桜は、エディションNO.1 をベースに、山桜を使って後熟したラインアップです。
形容が難しいですが、かなり独特なテイストで、4月5月ぐらいの日本を感じさせるテイストと言いましょうか。近いものだと桜餅や紅茶の香りが近いと思います。
個性溢れるウイスキーですが、「和」のテイストなので、日本人の味覚には馴染みやすい味です。
原料:モルト
度数:47%
容量:700ml
価格:6,500円前後
受賞歴:ワールド・ウイスキー・アワード2022 カテゴリウィナー
飲み方:ストレート、ハイボール、ハーフロック
AMAHGAN World Malt Edition Peated
エディションピーテッドは、長濱蒸留所ではじめてとなるピートタイプのブレンデッドウイスキーです。
原酒の一部をバーボン樽で熟成しているため、ピート感だけでなく砂糖系っぽい甘みも感じられます。
ピート好きはもちろん、優しい繊細な味わいなので、幅広い人が楽しみやすいテイストです。
原料:モルト
度数:47%
容量:700ml
価格:5,900円前後
受賞歴:ワールド・ウイスキー・アワード2022 シルバー
飲み方:ストレート、ロック
シングルモルト 長濵
長濱蒸溜所で蒸留したウイスキーのみで造られたウイスキーが「長濱」です。
全て日本洋酒酒造組合が定めるジャパニーズウイスキーの表示基準を満たしてリリースされており、海外原酒の使用がないことから、漢字表記で日本製であることが表現されています。
そんな「長濱」は、「一醸一樽」のコンセプトの通り、1樽を厳選し、ボトリングされています。
そのほとんどがカスクストレングスで詰められており、長濱蒸溜所のウイスキーをこの上なく味わうことが出来るでしょう。
人気のため入手は困難ですが、手に入れた際は、様々な飲み方で楽しんでみてください。
まとめ
長濱浪漫ビールの長濱蒸留所ついて紹介しました。
実は、私自身が滋賀県出身で、数年前に何度か観光客として伺ったことがありましたが、改めて内部を見せていただくと、日々の進化を発見する部分が多数ありました。
「一醸一樽」のコンセプトのもと、クラフトマンシップに忠実に一歩ずつ愛されるウイスキーへと日々アップデートされておられるのだと、非常に感動しました!
レストランも併設されており、ウイスキーを「体験」できる蒸溜所となっておりますので、次の旅行先リストに入れておいてみてはいかがでしょうか?
屋久さん、長濱浪漫ビールの皆さま、貴重なお話と見学ありがとうございました!
▼長濱浪漫ビールのHPはこちら
▼SAKE Peopleの購入ページはこちら
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